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限界集落とは~もはや東京も他人事ではない問題を専門家が解説!

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もくじ

限界集落とは

限界集落」とは、1990年以降にできた比較的新しい言葉。

「集落」というのは村や町などのコミュニティーを指す言葉ですが、多くの場合で田舎や人里離れたような地域に用いられています。

「集落」に「限界」という言葉が付くと、今後人口の増加や、地域の発展に「限界」がある集落という意味合いになります。

具体的には、「65歳以上の高齢者がその集落の人口の50%を超えること」と定義されています。過疎化し、高齢化した集落ということですね。

地域の発展に限界があるどころか、集落としての存続自体が危うく、消滅の危機にある地域が今後、頻出するという予測が立てられています。

2015年に総務省が発表した国勢調査では、日本の総人口に占める65歳以上の高齢者の割合は26.7%と過去最高を記録。

日本全体で見ても、4人に1人以上は高齢者という状態になっています。

人口の半分が高齢者という限界集落も、もはや他人事といえる問題ではありません。

全国では空き家が増加し、20年間で空き家の数は約2倍に

現在、全国的な空き家問題も深刻化しており、空き家の数は1000万戸に届こうかというラインに達しています。

参考:平成30年住宅・土地統計調査への期待

今後もこのペースは減るどころか、より急速に進んでいくでしょう。

一方で、首都圏のマンション価格はバブル期並みに高騰しており、市況は好調に見えます。

しかし、2020年東京オリンピック以降は、不動産にとっての好材料がほとんどなく、首都圏でも人口減少が始まります。

(※2020年以降に控えている悪材料について、2020年問題とは?ーマンション大暴落が予想される5つの理由で詳しくまとめています。)

もし、あなたが相続や生前贈与などで、人口減少の進む地方の住宅を保有しているのであれば、2019年は最後の売り時だといっても過言ではありません。

タダであっても買い手がつかない家は現在でも多く存在しますし、今後はますます増えていくでしょう。

買い手がつかず、ただ固定資産税などの維持費だけを支払い続けなければいけない状態になれば、家は完全に「負」動産になってしまいます。

現時点で売却を検討している人は、1度不動産会社に査定を依頼し、そもそも価格が付くのか、買い手が付きそうかどうか確認しておきましょう。

ただし、1社の不動産会社から「価値は0ですし、買い手もつかないでしょう」と言われてもあきらめる必要はありません。

不動産会社によって査定の基準は違うので、複数の不動産会社に必ず査定の依頼をかけてから判断するようにしましょう。

最近主流になってきている、不動産一括査定サイトを活用すれば、複数社にまとめて査定の依頼ができます。

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イエウール以外の不動産一括査定サイトをチェックしたい人は、下記の記事で詳しく解説しています。

不動産一括査定サイト33選ー評判も良い1番使えるサービスはコレ!

限界集落の現状

限界集落を経て、地域自体が消滅してしまう。そんな事態は、すでに始まっています。

5年ごとに過疎化した地域の調査をおこなっている国土交通省によると、平成22年から27年の5年間に消滅した地域は99市町村で190集落。

消滅を免れている地域においても、この5年間で集落の人口は平均して7.1%減少しており、今後10年では全集落の0.8%にあたる570の集落が消滅するのではないかと推定しています。

そして、これらの限界集落で今一番問題になっているのは、空き家の増加。

空き家が増えると、放置された建物の劣化した建材などで被害を受けるという安全上の問題、生き物が住み着いたりゴミが投げ込まれたりして起こる衛生上の問題、その地域の治安の問題など、さまざまな問題が生じます。

「人口減少⇒空き家の増加⇒治安や衛生の悪化」というループは、さらにその地域の人口を減少させてしまうという悪循環をもたらしてしまうんです。

また、高齢化とともに1つの集落の規模が小さくなってきていることも大きな問題です。

平成22年の調査では50人未満の集落が27.1%だったのに対し、平成27年の調査では30.3%。

小規模集落は山間部や離島などを中心に、着実に数を増加させています。

集落の規模が小さければ小さいほど、高齢者の割合が多く占める限界集落となる確立は上がっていき、中には全ての人が高齢者という集落も少なくはありません。

集落の規模の縮小化は全国に見られますが、特に10世帯以下の集落になると集落機能の維持困難となる割合が5割を超え、3割が消滅するとの統計もあります。

2. 東京に限界集落?

集合住宅の限界集落化

築40年 マンション

限界集落の多くは山間部や離島に存在しています。

しかし「集落」としては、限界ではないものの、1つの区画や団地という括りにして見てみれば、首都東京でも同じような現象が見られ始めています。

発端となったのは2008年に「限界集落」とも位置づけられた、東京都新宿区集合住宅。

厳密には集落ではないのですが、広大な敷地に35棟もの建物が建っておりもはや集落ともいえる規模の集合住宅です。

戦後間もない1949年に建てられたこの集合住宅は、都営住宅第一号として建てられ「団地」というイメージの代表格にもなっています。

東京のど真ん中の新宿にある集合住宅がなぜ限界集落となってしまったのかというと、新宿区に関して言えば住民の高齢化率は低いものの、地域をさらに区切って見てみると40%以上、50%以上の高齢化率にもなる地域が存在しているからです。

この集合住宅も新宿の中でも高齢化率の高い地域にあり、際立って築年数が古く、規模も大きいために「限界集落」と化してしまったわけですね。

このような集合住宅では、買い物や病院に行けない高齢者が増え、コミュニティーの崩壊、孤独死など、まさに限界集落と同様の問題を抱えています。

限界集落化による問題

他にもバブル期に栄えたベッドタウンや新興住宅などでは、首都圏にありながらも団地住人の高齢化、つまり「限界集落化」が進んでいます。

集合住宅が「限界集落化」して、まず問題になるのが、管理のことです。

集合住宅は、基本的に住人による管理組合が管理や修繕の決定をしていくものです。

当然、建物は年々劣化してしまいますから、日々の清掃や管理とともに長期の修繕計画を綿密に立てなければなりません。

築40年、50年ともなれば、建物の建て替えや取り壊しの話も出てくるでしょう。

しかし、建て替えなどの決定には、住人の一定数の賛成が必要になります。

住人のほとんどが高齢者だったら。一度決めたら何年も掛かる建て替えに同意する人が一定数集まるでしょうか。

また、住人の費用負担もあるであろう取り壊しにも同意するとは思えませんよね。

つまりこのままの状態で余生を過ごしたいと思う人が多く、「建て替えも取り壊しもできない」という集合住宅が増えていく可能性が高いということです。

こうなると、その地域には劣化した建物が増え、景観が損なわれ、最終的には団地の限界集落化では留まらず、本当の意味での「限界集落」と化してしまうことが考えられます。

この現象は首都近郊から始まり、やがては都心部でも多く見られるようになるかもしれません。

3. 今後の政策と限界集落を取り巻く新しい兆し

 

過疎地域に転入者が増加

国土交通省による調査では、集落の縮小化や消滅などの報告だけではなく、過疎が改善された地域の例や今後の政策についても報告されています。

平成22年から27年の5年間で、過疎地域として対象となった集落の4割に他地域からの転入者がいるとされ、特に北陸圏や北海道で転入者が多いことが確認されています。

転入者のいる集落の特性は、人口規模が100~200、世帯規模が50~100の中規模集落。小規模集落もある程度規模を大きくすることができれば、活性化の見込みがあるという大きな兆しといえそうです。

過疎地域に転入者が増えたという背景には、各自治体が移住者に空き家や土地を格安で提供したり、手厚い子育て支援をしたりするという政策が功を奏しているといえるでしょう。

特に「空き家活用」というのは、地域を再び活性化させる「キーワード」ともいえそうです。

例えば移住を考えている人にその地域での生活を体験してもらうための宿泊施設にしたり、地域のコミュニティーセンターにしたりと色々考えられますが、現在、国土交通省が限界集落など過疎化した地域で力を入れているのが「小さな拠点」を作るというもの。

「小さな拠点」とは、複数の集落が散在するような地域において、商店、診療所などの日常生活に不可欠な施設・機能や地域活動をおこなう場所を、歩いて動ける範囲にまとめるというものです。

さらに「小さな拠点」とその周辺の集落をコミュニティバス等で繋いだ「ふるさと集落生活圏」を形成することにより、持続可能な地域づくりを推進しよう、という政策が進められています。

出典:国土交通省

この時注目されるのが、その地域で放置されている空き家や空き地です。

空き家などの所有者としても「必要な人に使ってもらえる」、「活用方法を見いだせる」とあって、「地域の活性化」、「空き家活用」として一石二鳥の政策となりそうです。

リノベーションブームも限界集落化を改善

この「空き家活用」は、都心部の集合住宅の「限界集落化」の改善にも一役買ってくれる可能性があります。

近年では、古いマンションなどを一棟まるごと業者が買い付けて、リノベーションをして新築同様の設備や住環境にして再販するという「リノベーションマンション」というのが密かにブームになっています。

分譲主は本来掛かる新築マンションを建築するための土地の費用や建物を一から作る建築費を安く抑えられ、購入者は新築マンションより格安で同様の生活が送れるとあって人気。

このように、昨今では事業として空き家活用を考える業者も増えてきていることから、必ずしも住人みんなで建て替えや取り壊しを検討するのではなく、「一棟まるごとリノベーション業者に売る」という選択肢も出てきたわけです。

こちらも住人一定数の同意は必要にはなりますが、「多少でもお金になるのであれば」と前向きに考える人も多いのではないでしょうか。

4. 限界集落は未来の日本の縮図

高齢化と併せて問題になっているのが、少子化。働き手が少なくなっているにも関わらず、支えなければならない高齢者が増え続けているという状況は、今後さらに大きな問題となっていきます。

今後の日本を今まさに見ることができるのが、限界集落の現状ともいえます。

内閣府は、2025年には日本の総人口における高齢者の割合は30%を超え、2060年には40%ほどになると推定しています。

その後もさらに少子高齢化が進めば、近い未来に日本全体が限界集落になってしまう日も来るということです。

特に都心部での少子高齢化が加速すると見られるのは、2020年の東京オリンピック後だといわれています。

現在はオリンピック開催が決まってからというもの、景気が良くなっている実感もないのに各地は建設ラッシュ。

各種オリンピック施設の建設や、東京が注目されていることにより新築マンションや投資マンションがぞくぞくと建設されているのです。

今は首都圏に仕事が溢れていて、建設業界を中心に人手不足。

このような状況が東京オリンピックの盛り上がりとともにさらに加速し、オリンピックが終焉して一気に活気を失くしたらどうなるでしょうか。

ここから都心部の人口減少が始まるわけです。

日本の人口は右肩下がりですが、都心部に関しては東京オリンピックがピーク、そしてそこから一気に下降に転じるといわれています。

「人口が減れば減るほど地域の高齢化は加速する」というのは、限界集落化する特徴でしたね。

つまり2020年が、首都圏で「限界集落化が始まる年」といえるのではないでしょうか。

 

限界集落まとめ

 

限界集落は、日本に住んでいる人すべてにとって他人事ではない問題です。

地方の政策や動きに目を向け、今後必ずやってくる超高齢化社会のあり方や問題の解決法を考えなくてはいけません。

空き家や空き地を持て余してしまっているという方は、限界集落という問題を知ったことをきっかけに、地域の新興や活性化のために利用できないか、もしくは必要としている方に売却する道もあるのではないかという選択肢も考えてみてはいかがでしょうか。

国土交通省
「過疎地域等条件不利地域における集落の現状把握調査報告書(平成27年度)」
「集落地域における小さな拠点づくりに係る国の関連施策一覧(平成26年度)」

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